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#4 現実と非現実

なぜ、人は写真を撮るのだろう。
「記録に残したい」「思い出に浸りたい」「忘れたくないから」「綺麗なものをそのまま閉じ込めたい」……。いろんな思惑があって、人々はレンズをのぞきこみ、シャッターを押す。
写真はありのままの「現実」をそのままに閉じ込める。だが、彼女の写真はそうではない。「現実」ではなく、「非現実」がそこにはある。

写真を見て真っ先に目に飛び込んでくる空と海。
空を飛び回る鳥たちと、海の中にたたずむひと。そして遠くに見える遊園地のアトラクションの数々。
よくよく見てみると、この写真の中の風景は「あるはずのない風景」なのだ。

頻繁にフィルムでの撮影をするという彼女は、一風変わった技法を使う。彼女は何枚ものフィルムを重ねて、一つの風景を作り出す。
空と海の情景だけでも、十分に美しく、魅力的だ。しかし、彼女はそれだけでは飽き足らず、「あるはずのない風景」を生み出していく。

写真同士を重ねるという行為は、音楽に近いのではないかと彼女は考える。ハーモニーである音楽は、音が重なって生まれるもの。写真もそれと同じで、それぞれの良さをセッションさせると、不思議と予想以上にいいものが生まれたりする。それが重ねることの面白さだというのだ。音楽好きな彼女らしい考え方だ。

加工前の写真▶

それに加え、彼女は「重ねる」だけではなく、躊躇無く加工もするそうだ。
写真は時に生々しく「現実」を訴えかけてくる。ピントが合いすぎてしまっていると、それは現実の枠を超え、嘘のようにも見える。
しかし、彼女は加工をすることで生々しさを軽減させる。月の写真にぼかしを入れたり、やさしいビルの灯りを加えたり。 邪道かもしれないが、目で見ている感覚に近づけるために必要なことなのだ。それがリアリティとなる。

彼女の作品は、現実と非現実が入り混じる、とても不思議な世界を表現する。
それが彼女、出川光さんの写真の魅力の一つなのだ。

Photograph : Degawa Koh

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