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「ピテカントロプスになる日」Special Talk③

共通の知人友人は多いものの、なぜか長らく面識がなかった柳原陽一郎とおおはた雄一。それぞれお互いのアルバムを聴いて拍手喝采をしていながら、その気持ちが本人に届くことはなかった。その関係が変わったのが2013年の冬。ジャズドラマーの芳垣安洋率いるオルケスタ・リブレとの2枚組コラボレーションアルバム『うたのかたち~UTA NO KA・TA・TI』に二人が参加。それに続くリリース記念ツアーの場で、ついに初顔合わせ。そして今回のイベントで、いよいよ深く濃いジョイントが実現する。

対談の際に事前アンケートを実施いたしました!!

ロックバンドに憧れ19歳でくたびれ弾き語り。心やさしきオクテのロッカー
~柳原陽一郎&おおはた雄一~

おおはた雄一(以下、おおはた) もう5年以上前になると思うんですけど、下北沢の440にライブを見に行ったときのことは、今でもよく覚えてますね。とにかくいろんなインパクトがガーンとあって。その次にガツンときたのは『うたのかたち』ツアーの、名古屋でのライブですね。

柳原陽一郎(以下、柳原)あのとき最後に一緒にやらなかったっけ?

おおはた やりました、やりました。そこで柳原さんがアグラをかいて♪ピーヒャラピーヒャラ言ってるときの佇まいを、強烈に覚えてるんですよね。

柳原  すみません(笑)。

おおはた でも僕、芳垣さんが『うたのかたち』で柳原さんと僕を選んでくれたっていうのがすごく嬉しくて。

柳原 あのときはビックリした。いきなり「ブレヒトの『三文オペラ』やるんですけど、歌わない?」「……はぁ?」みたいな。しかも『三文オペラ』って歌に男と女の役があるのに、「両方やって」みたいな。無茶なジャズ注文的な(笑)。

おおはた あははは、ジャズ注文。

柳原 それで2枚組のCDも作るっていうから豪勢な話だなぁって思ってたら、1枚はおおはたさん担当で。っていう経緯ですね、僕達の面識は(笑)。でも僕は、おおはたさんの『Music From The Magic Shop』っていうアルバムをすごいよく聴くんですよ。

おおはた あ~、嬉しいですね。
 
柳原 うまくできてやがるなって(笑)。

おおはた はははは。僕が柳原さんの曲をすごくよく聴くようになったのは、むしろ最近なんです。でも、今振り返っても“たま”は強烈ですよね。毎週“イカ天”(三宅裕司のいかすバンド天国)を見てましたけど、“たま”の違和感たるやすごかった。なんじゃ、こりゃって。強烈でした。

柳原  すみません、申し訳ない(笑)。

おおはた 僕はその当時、とにかくバンドをやりたくて。でもギターは買えないから、とりあえずピックだけ買いに行って、なぜか聖飢魔Ⅱモデルを買ってしまい(笑)。学生服のボタンでチャカチャカやってました。

柳原  エアーギターだ(笑)。

おおはた あとはギターのカタログをずっと見てましたね。だから友達がお兄ちゃんのエレキを内緒で貸してくれたときは、うわっ、すげぇ!って興奮して。でも僕ら田舎だから、“ひずみ”を“ゆがみ”って呼んでました。「これ、けっこうゆがむよぉ~」「けっこうゆがむねぇ~」つって(笑)。

柳原  その頃、なぜギターが“ひずむ”か、わかってた?

おおはた わかってなかったです。

柳原 俺もわかんなくてさ。初めてエレキギターに触ったとき、『笑点』のテーマ曲みたいに♪シャラ~ン、テッテレテレテレッテテッみたいな音しかしなくて。だから俺、日本人は“ひずめ”ないんだと思ったわけ。

おおはた あはははは(笑)。

柳原  体力とか体格的な問題で、ダメなんだと思って。そしたら1年後くらいに友達が緑色の箱を持ってきて、それを踏みやがってさ。♪ギュウウゥ~~~ンだよ、あらららだよ(笑)。そういうことになってたんだって、そこで初めて知った。オクテだね、どうも。

おおはた  でも僕、柳原さんの歌を聴くたびに毎回ガーンとくるんですよ。なんかもう、言葉がすごい入ってくるんですよね。

柳原  いやいや照れくさいですなぁ。

おおはた やっぱり歌詞が聴こえてこないとあんまり……なので。誰のものでも僕は歌詞カードも見ずに、ずっと言葉を聴いてるんですね。だけどそうやって聴いてても、柳原さんの歌は言葉がまっすぐドーンってくるから。そういう意味で、柳原さんは言葉の人っていう印象が強かったりします。

柳原  いやいやいや……。

おおはた 例えば「やさしいひとたちはみんなガケップチ」っていうフレーズとかね、なんだろ、それだけで涙が出てくる。
柳原  おおはたさん、弱ってる?

おおはた かもしれない(笑)。そういう言葉が刺さってる間に、また次の言葉がくるから、僕にとってはめくるめく印象なんです。ベスト盤のタイトルにしても『もっけの幸い』だし。この人、頭の中はどういう感じになってるのかなって思ったり。

柳原  実は言葉とかって、コンプレックスがあるんですよね。

おおはた えっ? そうなんですか?!

柳原  今日はもうカミングアウトしちゃいますけど、“たま”は、どちらかというと奇妙なバンドとして捉えられてて。だけど、そこから先に行きたいと、ずっと思ってたんですね。ある時期から「好きです」とか「寂しいです」とか、そういう歌も歌いたいと思うようになって。それが脱退の理由の一つでもあるんですけど。

おおはた あぁ……そうなんですね。

柳原  “たま”のときの面白い言葉集みたいな歌から離れて、できるだけ誰でもわかるような塩梅のいい言葉で歌いたいなって。奇をてらうんじゃなくて、自分に対して正直な歌をね。だから歌詞がいいって言われると、どうにもこうにも。

おおはた 据わりが悪い、みたいな。

柳原  うん。歌詞を褒められると嬉しいような恥ずかしいような、こそばゆいような感じがします。

おおはた  いや、奇をてらった感じは全然しないです。ただ、歌詞でそんなふうに思ってるっていうのが、とっても意外でした。あと声ですよね。同じフレーズでも、声によって響く響かないがあるから。

柳原
 それは、おおはたさんだって大したものですよ。僕ね、ボブ・ディランが好きなんですけど。僕が若かった頃はライブハウスでオヤジ達が、最後は必ず『アイ・シャル・ビー・リリースト』 で明日も頑張ろう的に終わるってのがあってね。その熱血な感じがすごくイヤで。「あぁ…俺の好きなボブ・ディランがこんなに歌われちゃってよ……」って。だけどおおはたさんのボブ・ディランを聴いたとき、「やっと日本にも、こんなラクチ~ンにボブ・ディランを歌ってくれる人が現れた」って思ったの。ボブ・ディランがちゃんとした二枚目になって、そこにいるなぁと。救われるような想いでございましたよ。

おおはた いや……嬉しいです。そんなふうに聴いてもらってたなんて、ありがとうございます。

柳原  いやいや、こちらこそ。……でも照れますね、この感じ(笑)。

おおはた  あとね、俺はその、柳原さんに噺家さんのムードも感じるんですよ。

柳原  あ~~~~ぁ。和風の顔だし。♪てけてってんてんてんてんっ、でしょ?

おおはた  そう。ステージ出てくるときも「よいしょっ、と」って感じがして。なんか勝手に、“てけてん感”を感じてまして。名古屋のピーヒャラもそうですけど、ホントに時間の流れが違うっていうか。すごいなぁ、この人はって思ってたんですよね。

柳原  いやはや、お恥ずかしい。ところでさ、私の曲を歌ってもらえるそうなんですけど、リクエストしていい? 『ブルースを捧ぐ』って曲、やって欲しいんですよ。あれを、おおはたさんの声で聴いてみたいなぁと思って。あの曲ね、自分の曲で、たぶん一番好きなんです。いいですか? そんなお願い。

おおはた  いや、そんな。あの、頑張ります。あと僕、『なんいもいいことないけれど』でギターを弾きたいんですけど。

柳原  もちろん、ぜひ。だったらあの曲ね、ホントは♪ッチャンカッ、ッチャンカッってリズムだったんで、今回はそれでやってもいいですか。

おおはた もちろんです。ラグタイムっぽい感じで。

柳原  そうそう。いや、それは嬉しい。あと『ブルースを捧ぐ』もホントに嬉しい。自分の作った曲を誰かが歌ってくれるって、至福の瞬間なので。そこでコーラスなんかやれたら、もうこれ以上の幸せはないって感じ。

おおはた  じゃ、コーラスはお願いします(笑)。

柳原 望むところでございます(笑)。

“ピテカントロプス”アンケート おおはた雄一編